放課後の薄暗い校舎で、あるいは夏祭りの帰り道で、突然、そこにいたはずの人が消えてしまう。連絡はつかず、どこを探しても見つからない。まるで忽然とこの世から消え失せてしまったみたいに。そんな現象を「神かくし」と呼ぶ。
漫画「株式会社 神かくし」は、そんな「神かくし」をテーマにしたダークサスペンス漫画。ただし、主人公が神かくしに遭ってしまうわけではない。本作で主人公を務めるのは、市井の人々を神かくしに“遭わせる”側の人間。
一体どうやって……? そう思ったが最後、読者はこの奇想な設定の世界観にどんどん引き込まれていく——。

漫画「株式会社 神かくし」とは
漫画「株式会社 神かくし」は、片山陽介先生によるダークファンタジー/サスペンス漫画。依頼した人間を不慮の事故に見せかけて消すという“仕事”を請け負う謎の企業「株式会社 神かくし」を軸に、怪異と人間が交錯する物語。現実の“企業”という枠組みと、“神隠し”や怪異という伝承・オカルト的要素が融合した、これまでにないホラー・サスペンス漫画作品です。

—主人公・影井新太は、かつて振り込め詐欺という犯罪行為に関わっていた青年です。社会的に見れば「加害者側」の人間であり、善良とは言い難い過去を持っています。そんな彼が、ある依頼をきっかけに「株式会社 神かくし」と接触することから物語は始まります—。
ヤングキングで連載され、単行本は第9巻まで刊行されています(2025年7月発売)。最新巻でも設定を拡大しつつ、“会社”という骨格の中でさまざまな怪異・事件を描く独自の世界観が続いています。
漫画「株式会社 神かくし」のあらすじ
物語の主人公は、かつて振り込め詐欺グループに属していた青年・影井新太(かげい あらた)。ある日、その仲間を消すための依頼として「神かくし」を訪れたことで、彼の人生は大きく変わります。依頼内容は「対象者を不慮の事故に見せかけて消してほしい」というものでしたが、この会社の正体はさらに奇妙で危険な“仕事”を請け負う存在でした。


「神かくし」とは、単に人を“消す”のではなく、人ならざる存在(神・妖怪・怪異)に人間を“紹介”する業務を行う企業です。依頼された人間は、顧客である“神様”や土地神、悪霊などに“供物”として渡されることになります。つまりこの会社は——
怪異と人間が接触する橋渡し・惹き合わせ役として機能しているのです。
依頼内容は、“ある人物を不慮の事故に見せかけて消してほしい”というもの。一見すると単なる犯罪請負のようですが、神かくしが提供するのは単なる殺害ではありません。彼らの仕事は、人間を“神”や“怪異”へと紹介することです。
新太は次第に、この会社の業務に巻き込まれ、怪異と人間の境界線がいかに曖昧で、残酷なものであるかを思い知らされていきます。最初こそ戸惑いながらも、次第にこの世界の仕組みや深い闇を知ることに…。


漫画「株式会社 神かくし」世界観
『株式会社 神かくし』の最大の魅力は、怪異と人間の関係性を“ビジネス”として構造化している点にあります。普通のホラー作品なら怪異は恐怖対象であり、人間はそれに抗う立場ですが、本作では怪異も顧客の一種として扱われます。これは「怪異がサービス市場の需要を持つ」という、極めて異質な物語です。
彼らがターゲットを消すときに利用するもの——それは“神々”と呼ばれるものたちの存在。ときに怪異や化け物、幽霊などと呼ばれ恐れられることもあるかもしれない。怪異存在を使い、社長さんたちは人間を消してしまう…。


この“職業”としての怪異処理は、エンタメの怖さを超え、以下のような問いを読者に突きつけます。
- 「社会的に悪い存在」とされる人間は、なぜ怪異の供物として適合するのか
- 仕事として怪異と向き合うとは、どのような感情になり得るのか
このように、“怪異の供給と需要”というビジネスモデルが、作品全体の大きなテーマとなっています。
同時に、現代社会における「何でも仕組み化・制度化・ビジネス化してしまう人間の価値観」への皮肉とも読み取れます。人が消えるという重大な事象ですら、契約・報酬・リスク管理の対象になるという冷酷な構造が、物語全体に重くのしかかります。

漫画「株式会社 神かくし」 主人公・影井新太

主人公・影井新太は、元々は詐欺師という闇側の仕事に関わっていましたが、「神かくし」で働く中で自分自身の価値観・倫理観と向き合うことに。
初めは戸惑いつつも、次第に業務をこなしていく中で、人間とは何か、怪異とは何かという問いに直面していきます。
サスペンスとしてだけでなく、新太の成長・精神的変化も物語の重要な軸です。怪異と関わるごとに彼の感情や判断が揺れ、葛藤し、時には耐えられずに逃げ出したくなるような状況も描かれています。
「株式会社 神かくし」登場人物・キャラクター
● 社長/先輩・仲間たち

タイトルにもある「株式会社 神かくし」、飄々とした態度で関西弁を喋る〈社長さん〉、有能な秘書兼経理の〈お嬢〉、大柄で肉体労働者風の〈ミノさん〉の3名が働いている小さな会社。
3人はパッと見、どこにでもいるような人たち。むしろ“善良な人たち”にすら見える。
社長はこの会社を設立した人物で、怪異の世界に精通し、従業員への指導・判断を行います。他の社員たちも、それぞれに過去があり、怪異・人間の世界に関わる理由があります。
● 神・怪異たち
本作では「神」の定義が曖昧で、良い神・悪い神が入り混じります。神という存在自体が人間の信仰や感情から生まれたとも読める描写があり、彼らの要求や事情もさまざまです。依頼される“供物”も悪人ばかりではなく、状況・過去によって複雑な背景を持つ人物もいます。
たとえば第1話に登場するのは“山の神”。巨大な蛇のような身体に角の生えた人面を持つ、まさに異形の怪物である。“生贄”になった人間を騙し、大きな口で喰らってしまう。第2話にはいくつもの生首を携えた武士のような怪異が現れ、第3話では幼女の姿をした幽霊が登場する。

漫画「株式会社 神かくし」物語構成
漫画「株式会社 神かくし」は、一話完結的な業務描写と、シリーズ全体の伏線が絡む連続性を両立しています。各巻では新太たちが依頼を遂行するエピソードが中心ですが、それと並行して社長や仲間の過去、特定の“神様”にまつわる長編エピソードなどが展開。結果として、読者は単発でも楽しめつつ、続きが気になるドラマ性を味わえます。
テーマ
- 社会的正義と怪異
作品は、社会的に“悪い人間”が怪異の餌となる構造を描く一方で、「悪」とは何かという問いを提示します。単なる悪人討伐ではなく、なぜ怪異が人を求めるのか、その背景にある“倫理”や“価値観”の違いにも注目が必要です。
- 作画・演出
この作品の作風は、怪異の不気味さを強調しつつ、人物の心理描写を丁寧に描くバランスが印象的です。怪異のビジュアルはグロテスクでありながらも異形の美しさを持ち、物語の雰囲気を深めています。
読者レビューでも「怖いけど引き込まれる」「雰囲気が良い」と評価されており、ホラー・サスペンス好きから支持を受けています。
漫画「株式会社 神かくし」のまとめ
漫画「株式会社 神かくし」は、怪異ものとしてのホラー性と、組織・仕事としてのサスペンス性を同時に持つ作品です。人間と怪異の境界を曖昧にしながら、その中で働く人々の感情や倫理を丁寧に描くことで、恐怖漫画を超えた奥行きを生んでいます。
怪異という題材が好きな方、ダークホラー・サスペンスの物語が好きな方に特におすすめの一作です。続きが気になる構成や個性的なキャラクターも魅力で、今後の展開にも期待が集まっています。
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